骨にはタンパク質やリンなどとともに、たくさんのカルシウム(骨重量の約50%)が含まれています。しかし、骨に含まれるカルシウムなどの量(骨量)は若年期をピークに年齢とともに減ってきます。そして骨量が減少すると、骨の中の構造が壊れ、骨は非常にもろい状態になり(脆弱性亢進)、折れやすくなります。この状態が骨粗鬆症です。
骨粗鬆症には、上のような老化による骨粗鬆症の他に、成長期や出産後などに起こる場合もあります。
骨の構成成分であるカルシウムは、食事によって摂取され、腸で吸収されて血液中に入り、骨に運ばれ骨が作られます(骨形成)。その一方で、骨はしなやかさを保つために、古くなった骨の成分を壊し(骨吸収、骨破壊)、新陳代謝を行っています。
また、身体の中のカルシウムの約1%は骨や歯以外の細胞や血液中に存在して、神経や筋肉の興奮、あるいは血液凝固(血を固める働き)などで非常に重要な役割を果しています。そのため、血液中のカルシウムが足らなくなると、不足分を骨のカルシウムで補うことになります(骨吸収、骨破壊)。
このように、骨は身体を支える他に、カルシウムの貯蔵庫としての役割を担い、骨は作られる一方で絶えず破壊を繰り返しています。骨量の減少は、このような骨形成、骨吸収のバランスが崩れた結果なのです。
骨量の減少には以下にあげるようなさまざまな因子が関係してきます。
1.加齢
歳をとるとともに、身体の中のホルモンが変化するために、骨量が減少します。その他、胃酸分泌の低下や腸の吸収能の低下、腎臓での尿へのカルシウム排泄の増加なども原因となります。
2.女性、閉経
女性の最大骨量は男性より低く、また閉経後の数年間は急激に骨量が減少します。そのため、女性は男性より骨粗鬆症になる危険性が高く、より若い年齢から骨粗鬆症が見られます(男性では、女性ホルモンと同様、男性ホルモンが骨形成を進めています。
しかし、男性ホルモンは女性ホルモンほど加齢によって減少しません)
3.遺伝
家族に骨粗鬆症にかかった人がいる場合、骨粗鬆症になる可能性が高くなります。
4.カルシウム不足:カルシウム不足
カルシウムは少なくとも1日600mg、成長期の若い人、閉経を迎えた人などは1,000~1,500mgが必要です。高齢者では淡泊なものを好み、食事量も減ってくることから、カルシウムの摂取量が減りがちです。
5.ビタミンD不足
腸におけるカルシウムの吸収にはビタミンDの作用が必要なため、ビタミンDが不足するとカルシウムを吸収することができません。
6.日光浴不足
ビタミンDは、腸でのカルシウムの吸収に不可欠なビタミンです。そして、皮膚の中で日光の紫外線にあたって、はじめて、その役を果すことができるようになります(活性ビタミンD)。そのため、日光に当たらないとうまくカルシウムを吸収することができません。
7.運動不足
筋肉だけでなく、骨の強さを保つためにも運動は非常に大切です。運動といっても、スポーツとは限らず、日常生活の自然な動作や生活様式も、骨や筋肉の維持に影響します。
8.喫煙、飲酒、カフェイン
喫煙は胃腸の働きを悪くしてカルシウムの吸収を悪くし、過量のカフェインは尿へのカルシウムの排泄を増やします。また、過量のアルコールはカルシウムの吸収を減らして、排泄を増やします。
9.食塩、糖分
食塩や糖分を摂りすぎると、カルシウムの尿への排泄が増加し、身体の中のカルシウムが不足することになります。
10.ストレス
過度のストレスは、腸におけるカルシウムの吸収を妨げます。
11.薬剤
特にステロイドを長期で内服している方に、骨吸収の亢進と骨形成の低下を生じ、著明な骨量減少を来たすことが知られています。
骨粗鬆症は自覚症状が少ない病気です。そのなかで代表的な症状としては、骨折と、それに伴う痛みなどが中心になります。骨粗鬆症による骨折のほとんどは脊柱(背骨)、大腿骨(太ももの骨)、あるいは、橈骨(手首から肘にかけての親指側の骨)に起こります。
1.橈骨(トウコツ)の骨折
転んで手をついた際に起こる骨折です。橈骨(手首)の他、腕の付け根の骨(上腕骨頸部)を骨折することもあります。
2.大腿骨の骨折(大腿骨頸部骨折)
男女ともに高齢になるとともに転倒などによる大腿骨折を起こします。特に、太ももの骨(大腿骨) の脚の付け根に近い部分の骨折を起こしやすく、大腿骨頚部骨折とよばれます。大腿骨の骨折を起こすと寝込むことが多く、そのため運動不足などから、さらに骨量が減少するという悪循環に陥り、高齢者では「寝たきり」の原因になることが少なくありません。
3.脊柱(セキチュウ)の骨折(圧迫骨折)
・脊柱の変形、身長の短縮:重いものを持ったり、転んだりして普段より少し余計な力が身体に加わっただけで、椎骨(脊柱を構成している一つひとつの骨)が変形します。椎骨の変形は上下からの圧迫によって起こるため、全体が押しつぶされた状態を圧迫骨折と呼びます。椎骨の変形の種類や変形したり圧迫骨折を起こした椎骨の数によって、脊柱はさまざまな形に変形します。そのため、身長が短縮し姿勢や歩行の仕方にも変化が見られます。
・慢性の腰痛:椎骨の変形が徐々に生じると、背骨やその両側の筋肉が次第に痛むようになります。痛みは、寝返りや起床、歩行開始時など動作を始めるときに生じます。
・突然起こる腰、背中、時には胸の痛み:脊柱の中には神経(脊髄神経)が通り、さらに椎骨の間から身体の各部に向かう神経の枝が出ているため、椎骨の圧迫骨折が起こると、神経の枝が圧迫され、腰や背中に突然、激しい痛みが生じます(腰痛や背中の痛み)。ときには、胸やお尻に痛みを感じることもあります。
1.日頃からカルシウム摂取を心がけた食生活を実現し、骨量を増やし減少を防ぎましょう。
2.自分の骨量を知っておきましょう-早期発見。
3.骨折の原因となりやすい動作や転倒などに注意しましょう。
最も大切なのは、骨量が最大となる若年期に、骨量をより多くしておくことです。この時点の骨量が多ければ、歳をとって骨量が減少しても、骨粗鬆症になる危険は少なくなります。そのためには、小児期および青年期から、しっかり骨量を増やしておくことが大切です。
是非とも、若いときから長期的に骨粗鬆症の予防に取り組み、明るい高齢期を実現してください。
●カルシウムを含む食品をたくさん食べましょう
成人におけるカルシウムの1日所要量は600mg前後ですが、成長期の若い人、閉経を迎えた人、また、これを過ぎて骨粗鬆症の危険度が高い人は多くのカルシウムが必要です。しかし、カルシウムはなかなかとりにくい栄養素で、1日所要量を満たしていない人が多いといわれています。
カルシウムを食品から摂るなら、牛乳、チーズ、ヨーグルト等の乳製品、骨ごと食べられる小魚類、小松菜等の緑黄色野菜や海草類などに多く含まれています。 カルシウムは体に吸収されにくいミネラルなのでこれらの食品を積極的に摂取しましょうただし、カルシウムは食品から摂る分には問題ないですが、サプリメントから摂る場合は過剰摂取に注意してください。(上限2300mg)
最近、若い女性の間でダイエットをする人が多く見られますが、カルシウムを意識しないダイエットは骨量を著しく減少させます。骨粗鬆症はおばあさんのなる病気と決め付けてはいませんか。実は病気になるもならないも、10~20歳代からの食生活が大変影響してきます。ダイエットをする際には、くれぐれもご用心を。
●腸でのカルシウムの吸収を良くしましょう
・ビタミンDを摂る
ビタミンDは、カツオ、マグロ、アジ、レバー、バター、たまご、椎茸などに多く含まれています。
・日光にあたる
食物に含まれるビタミンDは、正確には前駆体(プロビタミンD)です。
実際に役立つビタミンDになるには、いったん皮下の脂肪組織に蓄えられて、日光の紫外線の作用を受ける必要があります。夏なら木陰で30分、冬なら顔や手に太陽を1時間当てるくらいで、1日に必要なビタミンDが十分作られます。
・タバコを吸わない
タバコの持つ直接作用(ニコチンやカドミウム等による骨細胞破壊)と間接作用(小腸からの吸収抑制、ビタミンD不足、ホルモンへの影響など)によると言われています。
・アルコールをとりすぎない
アルコールの飲みすぎはカルシウムの吸収を低下させます。
●定期的に運動をしましょう
・運動とは
骨に力(体重)がかかるような運動(陸上競技、重量挙げなど)が骨量をよく増加させます。しかし、長距離走や過度の運動や減量を必要とするもの、ストレスになるほどの運動は、かえって骨量を減少させることがあります。高齢者では、心臓、肺や、手足の関節に負担をかけない運動(歩行、ジョギング、自転車、体操など)が勧められます。なかでも、歩行は最も簡単で、速度によって強さを調節することもできる運動です。
・注意点
高齢者や膝、股関節に変形が見られる方や、他の病気を治療中の方は、必ず主治医と相談のうえ行ってください。また、運動中に身体に異常があったら、すぐに中止し医師の診断・治療を受けてください。
●カルシウムがおしっこに過剰に排泄されないようにしましょう
・食塩、糖を摂りすぎない。
・カフェインを摂りすぎない。
●骨折を防ぐための日常生活上の工夫や注意点
・つまずきそうなものは片づける。
・段差をなくす。
・階段には、手すりや滑り止めをつける。
・風呂場には手すりをつけ、湯船の中には滑り止めマットを敷く。
・暗いところには、足下を照らす明かりをつける。
・家の中では素足、外では運動靴がよい。
・大雨、強風、雪などの日は外出を避け、人混みも避ける。
・重いものを持ったり、運んだりしない。
1.脊柱のレントゲン検査(X線検査)
脊柱の老化には、骨粗鬆症の他に変形性脊椎症と脊椎周囲靱帯骨化症とがあります。X線撮影で、これらを区別します。
2.血液検査、尿検査
血液検査や尿検査によって、症状が骨粗鬆症と似ていながら、原因の異なる他の病気(骨軟化症、原発性副甲状腺機能亢進症、前立腺がん骨転移、べーチェット病、悪性腫瘍骨転移など)を区別します。
3.骨量測定
骨量を測定する方法には、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)や末梢骨定量的CT法(pQCT法)、単純X線撮影(MD法など)超音波法があります。
椎体や大腿骨近位部を用いた躯幹骨DXA法が、骨粗鬆症の診断に最適な測定法であるとされていますが、骨折予防の診断法としては必ずしも有用とはいえません。骨量は測定機器や測り方によって変わることがあるため、正確な診断や治療のためには継続して診察を受けることが大切です。
ほとんどの骨粗鬆症患者さんは、骨折を起こして初めて病気であることがわかります。治療には、運動療法、食事療法、薬物療法があり、骨塩量の減少の程度や症状に合わせて行われます。
1.運動療法
日常生活でできる範囲の軽い運動、骨粗鬆症のための体操、理学療法士による運動療法などを症状に合わせて行います。
2.食事療法
・カルシウムを含む食品をたくさん食べましょう。
・腸でのカルシウムの吸収を良くする食品を摂りましょう。
3.薬物療法
軽症の場合は、運動療法と食事療法で様子を見ますが、これで改善されなかったり、かなり骨量が減少している場合は、薬物療法を始めます。
薬剤にはいろいろな種類があるため、おしっことして排泄されているカルシウムの量、年齢、女性では閉経時期との関係、子宮ガンや乳ガン、血栓症にかかったことがあるかどうか、などによって使う薬剤を決めます。また、骨塩量と痛みの変化から治療効果を判断し、薬剤を変更したり、2種類以上の薬を併用することもあります。
4.理学療法
・温熱療法:入浴、温湿布、ホットパックなど。
・マッサージ:血行をよくして新陳代謝を進め痛みを軽くします。
・コルセット:圧迫骨折による痛みを軽くし、また、脊柱の変形を予防します。
5.手術
手首と脊椎の骨折は、薬物療法や温熱療法、理学療法で治療するのが一般的ですが、大腿骨頸部骨折は高齢者でもよほどの危険がない限り手術を行います。
おおさか循環器内科・生活習慣病クリニック
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